2/13はPAO羽村店、最後の日でした
羽村にPAOが来てから約11年。生まれた赤ん坊が小学校5年生になる期間、続けてきました。ただそれも今日で最後となります。スタッフの一部は青梅店で引き続き働くことになっていますが、お店としては今日でラストの営業。
地域のみんなにゲームの楽しさをお店として伝えられなくなるのはすごく心苦しいですし、また力不足だったなぁと感じます。
一般的に閉店というと、理由として頭に浮かぶのが『赤字だから』です。やればやるほど赤字のお店は利益的に存続する意味がありません。
ただ、PAO羽村店は黒字だったんですね。年間でも利益的にはまだやっていける数字ではあります(人件費を多少削るなどのコスト削減はやっていましたが)そのため、赤字だから、というのは今回の場合当てはまりません。
◆赤字じゃないのになぜ閉店?
なら閉店しなくていいじゃん、と思いますがここで関係してくるのが国分寺店のオープンです。新店をオープンするためには、
・内外装工事
・在庫
・家賃、保証金
・什器(じゅうき。ゲームを置く棚のこと。)
が初期費用として主に必要となってきます。これらを合計すると少なくとも500万円以上のお金が必要になってきます(お店の規模によっては1000万円ぐらいになるかも)
本来ならこれを用意してオープン、7店舗になったねやったー!ってなるのが理想です。しかしそのためにはこの初期費用の部分がかなりネックです。
現状のゲーム業界は昔に比べて規模が半分になっており、ダウンロード版が普及してきた分、パッケージ販売の比率は落ちています。また、Amazonを筆頭とするネット通販、そしてSNSやスマホでできるゲームで時間を使える時代になったこともあり、TVゲーム自体に時間を使う人(特にライト層)が少なくなっている状態です。
そしてPS4ではいずれクラウドゲーミングの波もくるでしょうから、ますますゲーム小売にとって厳しい状況(今でも十二分に厳しいんですが)になるのは確定です。
◆もし自分が経営者だったら、先行き厳しい業態に投資ができるか?
そんな状況で、新規投資で500万円~1000万円のお金をかけられるかどうか? 経営者の目線から見れば出す理由はなかなか見あたらないわけです。
経営者としては投資して、その分以上に回収できるビジネスを常に探し求めています。回収スピードも昔は5年や3年などの長さで投資回収できればOKでしたが、最近の世の中のスピードは大変早く、1年や6ヶ月という早期回収ができる業態も出てきています。
それらを知っており、なおそれでゲームに投資をする経営者がいるのか? おそらく非常に少数でしょう。経営者としてはやっぱりビジネスとして会社全体を動かさなければいけません。
経営者の人は差こそあれ、とにかくシビアに物事を捉えます。回収の見込みがないと判断すれば、その業種全体をたたむことに抵抗は無いのです。
◆そんな状況で1つの方法は…
ただ、1つの店舗分の在庫や什器を移設するなら、その分の費用は浮くので内外装の工事費と家賃&保証金で済みます。これなら数百万(それでもこのぐらい)でOKです。
国分寺は八王子と同じで学生さんが多い街であり、中古がより売れる土地柄だと予測されるため、この移転に関しての費用は出せる判断となります(回収できる算段が付くので)
逆に羽村は一戸建てが多く、平均年齢も年々高くなる土地のため、多くの人が大人になって仕事が忙しくなり、所帯を持ち…とじょじょにゲームを遊ばなくなる傾向からすると国分寺に比べて厳しい立地です。
そのため、国分寺に出す代わりに羽村を締める、ということでしか、初期費用を抑えることができない状況でした。
また、これらの費用や経営的な視点が大きな要因の中、もう1つ大きな理由がありました。それは…
◆人的資源の問題
国分寺がオープンした場合、もちろん店長を任命して行ってもらうことになります。そして、既存店からは店長が1人減ります。そして、その減った分を埋めるだけの実力を持った人材が存在しなかったんですね。
正確に言うと、店長の数が足りない、ということでもあります。複数店舗を見ることができる実力を持った人がいれば良かったのですが、その器に値する人物も存在しませんでした。
人材の余裕があれば、おそらく羽村は閉店しなくて良かったでしょう。しかしウチの場合は実力の前に目指す方向性に共感してもらえる人材であることが第一です。目的が一緒であることが前提で、そこから実力云々という話になります。なので人材確保や教育に関してもけっこう時間をかけないと育たない流れになっていました。
▲羽村店最後の日に取った外観。11年間の最後の姿です。
費用と人的資源。この2つを満たせない結果、今回の羽村店閉店の結果につながってしまいました。
今回の閉店は自分たちの力不足というしかありません。厳しい目で見れば店舗として、遠くからでも来る価値のあるお店ではなかったと言われても仕方がないでしょう。人的資源の問題に関しても同様です。地域でウチを使ってくれている人には本当に申しわけないと思っています。
◆これから、ゲームの小売店は生き残れるか?
前述した通販の台頭で、「リアルの店舗などいらない」という意見を目にすることもあります。確かに『利便性だけ』を考えればそうです。
しかし、現実に存在する店舗に遠くから来店してくれるようなところは全国にたくさんあります。それらの多くは通販が台頭してきたからといってまったく関係がありません。そこのお店でしか体験できない魅力、面白さ、楽しさがあるからです。
今後のPAOもそれらのお店と同じレベル、つまり圧倒的なリアル店舗としての力を身につける、もしくは他の商材を取り入れていく、どちらかしか生き残る術は無いでしょう。ゲームのパッケージ販売がダウンロードやクラウドゲームだけになる可能性も今後十二分にあります。
ただ、現状だと自分たちの努力、勉強しだいでなんとかなるレベルだと考えています。今回の羽村の閉店は個人的にも会社的にも実力不足を痛感した出来事でした。また数年後に同じ想いをしたくはないので、地域のみなさんに愛され、何も用がなくてもなんとなく足を運んでしまう、そんなお店を実現すべく今以上に努力しないといけないです。
いけないっていうとやらないといけない、みたいでアレなんですが、自分をはじめその想いはいっしょです。実力が足りないかもしれませんが、今後、同じ状況になったときに既存店も新店も両立できるように絶対にしたい。
そんなことを思った、今回の羽村店の閉店でした。
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