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【レビュー】『一緒に行きましょう逝きましょう生きましょう』。重く暗いテーマを存分に味あわせてくれる意欲作。

更新日:

 

選択肢が存在しない1本道のアドベンチャー

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一緒に行きましょう逝きましょう生きましょう(iOS/Android/PC)

 

このゲームを知ったのはツイッターでフォローさせていただいているケイ茶(@key42395944)さん。以前この方がゲームを開発していることを知ったときに本タイトルのことを知りました。

名前がとても独特で印象的だったため、ずっと頭の隅に残っていたところ、ニュースで発売を知りダウンロード。そして先日、クリアを果たしました。

内容は一般的なアドベンチャーとはかなり印象が違う暗く重いものであり、面白さも含めてとても興味深いものでした。

※レビュー内容、及び掲載SSはiOS版のものです。

 

滅んだ世界で旅をする、一組の男女の物語

主人公は『鏡夜』という高校生の男。ヒロインは『アサギリ』という少女。この2人が崩壊した世界を旅する姿を描く物語となっています。公式サイトに掲載されているあらすじは以下の通り。

 

ある日高校生の鏡夜が目覚めると、世界は様変わりしていた。

体は動かず、建物は寂れ、荒地が続く。
通りがかった少女によると、世界は滅んだという。
信じたくない鏡夜は、他の生物を探すため、少女と共に廃虚を旅する。

――しかし。少女には『使命』があった。

人間の罪を償うために、彼女は死に続けなければならない。
何回も、何十回も、何百回も、何千回も。何万回も。息絶えては生き返る。
苦痛しか知らない彼女を見ているうちに、幸せを教えたいと鏡夜は思う。

滅んだ世界で2人きり。
死に続ける少女と、生きるための旅をする。

 

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ラノベやアニメでは、わかりやすい設定のキャラクターやヒロインが登場しますよね。ある意味安心できる形といえるのですが、それとは裏腹に本作のヒロインはかなり異質。特に最初の場面において化物と形容されるシーンがありますが、本作の異質さが際立っていると強く感じる部分です。

ヒロインへの印象はプレイするに従い、最初とはぜんぜん違う風に変化してきます。その描き方も自然で見事! ストーリーの進行とともに変わってくる彼女の姿はとても楽しく見ることができました。松代真由さんによるフルボイスもピッタリで、序盤と後半の声の変化はかなり良かったです。

 

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人間の罪を償うために死んでは生き返る少女と、それを見守ることしかできない主人公。この2人が織りなす物語は一種の神々しさを感じるほどでした。エンディング後は手塚治虫の『火の鳥』の読後感にも通じるところがあり、重く暗いテーマの味を素直に活かしてるのが良いですね。

 

舞台やキャラクターを広げず、あえて極限まで限定したことで生まれた独自性

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今やアドベンチャーゲーム界隈を飛び越え、一躍有名になった『TYPE-MOON』。元は同人ソフト『月姫』でその名を轟かせました。

多彩なキャラクター、そして膨大な設定は当時のプレイヤーを夢中にさせ、現在に至るまでのフォロワーを作りました。法人化第一弾の『Fate/stay night』は数度のアニメ化をされ、今でも続く大人気コンテンツとなっています。それぞれの作品でつながりなども感じるあたり、緻密な設定の物語としては1つの完成形といっていいでしょう。

 

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逆に本作はそれと対極の設定となっています。

限られた登場キャラ、崩壊後の世界で訪れる舞台は砂漠、廃墟など。見た目の変化があまりない舞台。物語のほとんどは主人公とヒロインの会話で構成されるなど、一般的なアニメやラノベのように気軽に楽しめる展開ではありません。

テーマ的にも明るい内容が好みな人には向いていないと断言できます。おしょ~は重い内容がとても好きなため、かなりツボにはまりました。好みが別れるのは仕方がないでしょう。

それだけに独自性は圧倒的であり、クリアした人の心に何かを残すという点で、プレイしてみる価値はかなり高いです。

 

物語を象徴する素晴らしい楽曲群

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作中で使われる曲は全部で12曲。そのどれもがかなりの完成度である中、特に良かったのが『果てなき旅路』『罪と罰』の2曲。

『果てなき旅路』は作中で常に流れている一曲。大きく広がる砂漠や廃墟など虚無的な世界観にあっており、頭の中のイメージを広げるのに役立ってくれます。

そして『罪と罰』。これはおしょ~が一番好きな曲です。本作を象徴する曲といっていいでしょう。これほど物語の内容を的確に表現したゲーム音楽はなかなかありません。サントラ欲しいぐらいのレベルです。

 

テンプレな物語に飽きた人にオススメ

選択肢のない1本道のアドベンチャーであるため、480円という価格設定をどう思うかはプレイした人によって変わってくるでしょう。個人的には1コインでこれだけの物語を提供してくれることに感謝したいです。

 

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最後までプレイした人といろいろ語り合いたい気分にさせてくれる『一緒に行きましょう逝きましょう生きましょう』。氾濫するテンプレな物語に飽きた人に強く勧めたい、人間のあり方を考えさせられる1本。とても楽しかったです!

 

 

【公式サイト】
・一緒に行きましょう逝きましょう生きましょう

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1976年、東京都福生市生まれ。幼少時からゲームに親しみ共に過ごす。プログラマ、ゲームシナリオライター見習いなどを数々の職業を経て現在、東京都にあるゲーム専門店PAOで販促企画を担当。ゲームの面白さをもっと世の中に伝えるべく、ブログ『激コアゲームライフ』を運営中。

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